第 5 章
下層階
最初に変わったのは光だった。後になって下りのことを整理したとき、彼が分類したのは、そのことだった。スロープでもなく、暗闇でもなく、段階を追って消えていく光。レジスターを一段ずつ落とすようにして消えていく、グリッドの均一な白い光。残ったものは闇ではなかった。もっと古い光だった。斜めに差し込み、重く、長いあいだ閉ざされていた窓が、それでもなお開こうとしているような色をしていた。空気も変わっていた。スロープの最下部で17.4度。彼がこれまでに立ったことのある、いちばん冷たい空気だった。神経ロックが入って以来、二十一ではない初めての温度だった。彼は肘掛けに白く浮いた指の関節を残したまま立ち止まり、古い通りの埃を車輪の上に落ち着くにまかせた。彼の死んだ膝の上で、毛布の上の猫は目を開けなかった。
猫はあの門をくぐってからずっと眠っていた。フラットでの、あのべったりとした、間違った、プラグを抜かれたような眠りとは種類の違う眠りだった。あれはふたりの男と一晩の代金を支払った眠りだ。今回はまだ何も支払われていない。何もかからない勘定とは、動いている勘定のことだ。彼はその算数を手の届かないところへ置き、押し進んだ。ここでは、上の階のグリッドがそうするように、何ものも自分の姿を現さなかった。床は、空気がそこに残していくものだけを受け取っていた。古い通りから立ちのぼってくる匂いは、彼が《天候・旧》という見出しの下に綴じた最初のものだった。雨。あるいは雨が空から取り去られたときに残していったもの。湿って、鉱物的で、忍耐強い匂い。
また檻のなかだな。
その言葉はいつものように届いた。すでに書かれて、すでに彼のもので、彼が気づくまる一秒前から空中に立っていた。猫は動いてはいなかった。目はまだ閉じたままで、声は毛布の上から、その場所で待っていたかのように、急がずに流れてきた。
「檻って、何だ?」
檻だよ。お前が数字を入れて、数字にお前を触れさせないための小さな部屋。 尻尾が毛布の折り目に沿って、その判決を下した。お前は二十年、自分の算術を柵で囲ってきた。アーサー。この都市が決して監査することのない、ただひとつの余剰だ。
彼は黙ったまま、その言葉を空中に立たせておいた。
古い通りはふたりの前方へ延びていた。それが通りの形をしている——そこが奇妙なのだ——現在の地図が描くのをやめた背骨を持ち、瓦の床を持ち、列柱を持ち、ガラスが柔らかくなった店先を持っていた。
頭上では、落ちたまま修繕されることのない天井——誰もここへは修繕に来ないからだ——の向こうに、空が一かけら覗いていた。彼はそれを、欠けているものによって読んだ。そこには時刻の色があった。そこには鳥がいなかった。彼はその不在のなかで一生を生きてきた。都市の天井は、空に対する都市自身の答えだった。空は何も運んではいなかった。
そしてその下で、箱を開けずにいても、何かが浮かびあがった。彼が一度だけ聞いたことのある音。彼が小さすぎて、その記憶に日付がなく、温度しか残っていなかった頃の音。遠くまで届く、高く、短い音。空が彼のために留めておいた音。彼はそれを確かめたことはなかった。尋ねることのできる生き残りは誰もいなかった。そして尋ねることは記憶を使い果たすことだったから、彼はそれを使い果たさなかった。彼はそれを、そのままにしておいた。
猫の目が開いた。
それはただ開いているだけだった。開け放たれた扉。そのなかの注意が通りと壊れた空に向かい合い、前脚が前に出た。一本、それからもう一本。ある重さが定位置へ運ばれていくように。猫は通りの奥、グリッドのある方角を見上げた。そしてグリッドは、一階層上、ひとつの世界の彼方から、下を見ていた。
彼が最初に感じたのは圧力だった。都市の注意が死んだ階層へ降りてくる。余剰のあとに、フラットのうえへ降りてきたのと同じように。出所のない、部屋の温度の変化。通りのずっと先で、埃の一団が風とは無関係の流れに乗って動いていた。彼らは掃かれようとしていた。彼には目が見えなかった。しかし、数えられていることは感じられた。計器の網が古い通りを引き下ろしてゆく——封鎖されているはずのものを検めるために、スロープを見つけるために、彼の車輪に降り積もった埃を見つけるために、グリッドが一晩かけて言葉をこしらえていた、たったひとつの暖かい痕跡を見つけるために。
これは警官たちよりも高くつく。 猫は何を言うにも、値段の引用のように言った。手を車輪に置け。アーサー。動くな。
世界は滑らかになった。
彼はその滑らかさの内側に、かつて一度だけいたことがあった。フラットで、警官たちのあとで、報告書が完成品として出来上がったとき。埃ひとつなく、記録なし、まるでそこに何もなかったかのように。それは都市自身の算術で、出来上がった部屋と同じ種類のものだった。ただ帳簿を誰が握っているかだけが違った。彼には壁と読めた。店先は封鎖されたコンクリートと読めた。空の一かけらは天井と読め、その上にグリッドの均一な白が、支払いのように敷かれていた。埃は落ち着くのをやめ、自分が何であるかを告げられるのを待っているもののように、滑らかさのなかに留め置かれた。そこには影がなかった。それが彼が最初に気づいたことだった。そして最後に気づいたことでもあった。網が来つつあったからだ。
網は通りを下りてきた。彼はそれを、いつも何かを聞くのと同じ方法で聞いた。空気のなかにできる形によって。目が戸口から戸口へ移っていく。計器が瓦の溝を刻みながら、継ぎ目を探し、スロープを探し、暖かい痕跡を探し、そして通り過ぎていく。目は、彼と猫のいる滑らかな壁のところまで来た。滑らかさは保たれた。目はそこにまる三秒とどまった。彼はそれを、いつもの規律で数えた。そして目は滑り去り、網は通りを引き上げて古い階層の外へ出ていった。都市自身の手で、何も検めずに。
滑らかさは、幕が降りるように、一度に降りた。匂いが戻ってきた。埃は自分が埃であることを思い出した。猫の背中の黒は、毛布の上で一段薄くなっていた。染料が薄くなるように。支払いが流れ出ていくように。猫は一度だけ彼を見、目を畳んだ——まばたきではなく、留め金が閉じるように——そして言った。言葉は細く、使い果たされていた。
滑らかさ、五十メートル分。請求書は回っている。締めのときに提示する。
そして猫は、いるところで眠った。深く、間違って。プラグを抜かれたもののように。前脚は毛布の折り目を越えて投げ出され、唇は下の歯に引っかかり、牙の一片が、誰にも見せずに覗いていた。
彼は下りの秒数を、目がとどまった秒数を数えたときと同じように数えた。二十でもまだ眠っている。百になってもまだ。脇腹のリズムは、誰の借りでもなかった。アーサーは身をかがめて見た。断言はできなかった。する必要もなかっただろう。古い光のなか、片方の耳の先端で、毛が一瞬、空よりも薄くなった。言うのをやめようと決めた口のなかで、言葉が薄くなるように。彼はそれを、分類なしで綴じた。彼がこれまでに記した記録のなかで、読み間違えていないか確信の持てない、最初の項目だった。
彼は押し進んだ。古い通りは広場に開け、広場は市場のホールに開けた。屋根は一枚のまま落ちていた。箱の上に蓋が落ちるように。店先が一列に並び、ガラスは柔らかくなっていた。彼はそれらを一軒ずつ読んでいった。彼に開かれることを許された、はじめての死んだ都市の目録。看板に、彼が《穀物》と呼ぶほかない何かの束を描いたパン屋。靴直し職人。巣穴街の人々はその看板を通り過ぎていった。彼らには、それらを分類する形がなかった。ひとりの女が戸口に立ち、触覚バンドを前腕に押し当てていた。古い、慰めのパターン。しかし彼女は、名前をつけられるものは何ひとつ得なかった。看板を読むのはアーサーだけだった。
そして、その店があった。彼が文字を保つために長いあいだ前で立っていなければならなかった店。F-E-A-T-H-E-R。F-U-R。そのあいだに、蝶番のようなアンパサンド。彼はそれを部分ごとに音読した。技師のファイルの死んだ文法を音読するのと同じように。そして文は組み上がり、滑り落ちなかった。動物の外側を売っていた店。看板の奥の暗い窓のなかには、檻があった。錆びた格子。開いて振れたままの扉。何かがかつて一度、そこから放たれた。そして誰も、それを閉めに戻ってこなかった。都市は、放つことを彼が生まれる前に済ませていた。扉は彼の全生涯を通じて開いたままだった。それに気づくことのできるのは、彼だけだった。
彼は箱を開けなかった。しかし彼のなかの何かが、錠に手を置いた。彼は指の血が引いて白くなったまま窓の前に立ち、その瞬間が過ぎていくのを待った。猫は眠りつづけた。そしてホールのずっと奥から声が聞こえてきた。彼が死んだ文法を知っていたように知っている声。それが文法であると知るはるか前から知っていた声。彼はその声のほうへ向き直った。
ナディア・ソレンがホールの遠い端に立っていた。片腕に布の包みを抱えて。彼女は、建物の照合が彼女の家の余剰に刻印を押し、都市が彼らを下へ移してからの五年、何ひとつ変わっていなかった。同じ細い肩が、借り物のように同じコートを背負っていた。彼女は彼を見た。見るのに少し時間がかかった。五年ぶりの認識が、間違った見出しの下に到着した。
「アーサー」
「ナディア」
「あなたも刻印されたのね」と彼女は言った。静かに、平坦に、ほとんど優しく。非難のない事実の陳述が、鍵のように差し出された。非難というものは、答えを期待する者のためのものだから。
「ああ」
「フラットは、いつもそうだった」と彼女は言った。「私は昔、目を覚ましたまま横になって、夜のあいだに照合があなたの扉の前を通り過ぎていくのを聞いていた。止まって、また進んで、止まって。そのたびに私は思ったわ。まあ、いいわ。」彼女は布の包みを見た。「彼らが私たちのところへ来たのは、彼が一歳のとき。最初に父親。それから私たち。都市はきちんとしているわ、アーサー。列は、最後まで終えるの」
「イーライ?」と彼は言った。
彼女は背後をちらりと見た。すると柱の影から少年が進み出てきた。小さい。六歳。似合わないコートを着て、開いた両手に何かを抱えていた。
少年は一歩分離れて立ち止まり、車椅子の車輪を見つめた。その視線は礼儀を超えて続いた。それから興味も超えて続いた。ナディアは彼を急かさなかった。「好きにさせておいて」と彼女は言った。「この下で、指した方向へ進む最初の車輪のついたものだから」
やがて視線は彼を離れた。少年は抱えていたものへ向き直り、それを光にかざした。はっきり見ようとするもののように。黒い毛皮の切れ端。虫食いで、縁はぼろぼろになっていた。あまりに古くて、もうほかに名前のない、何かの衣服の袖口。アーサーにはわかった。彼が自分の箱を隠すのと同じように、隠されていたのだ。床の下に。缶のなかに。照合が数えることのできない場所に。
少年はそれを頬に当て、目を閉じた。その仕草はあまりに古く、あまりに借り物でないものだったので、アーサーはまた錠を感じた。そして触れなかった。その切れ端は、何の匂いも放っていなかった。そういう匂いのするものは、もういなかった。都市はもはや動物を作らなかった。
「それは何だ?」とアーサーは、自分が言うのを聞いた。彼の声は、生涯ずっと声を出すときのように出た。注意深く、平坦に。申告書を項目ごとに記入する男のように。
「あたたかい」と少年は言った。「やわらかい」
「それは——」
文は、その終わりを脱ぎ捨てた。
アーサーは、それが縮図で起こるのを見ていた。通りが意味を滑らかさへと脱ぎ捨てるのを見ていたように。少年の顔は、一拍だけ広がり、それから滑らかになった。心が、ガラスの上の水のように、形から滑り落ちていく。彼の口から出かかっていた言葉は、指示対象のないまま空中に取り残された。それを保持する新しい記憶は形成されなかった。少年は手のなかの切れ端を見下ろし、また頬に擦りつけた。満ち足りて。何の疑問も持たないものへの接し方で。都市の全製品。完成され、埃ひとつなく、記録もなしに。
「ふわふわ」とアーサーは言った。その言葉はほとんど彼の同意なしに、非常に低く出た。そして市場のホールの空気のなかに、よそ者として浮かんだ。
少年は顔を上げた。「ふわ——」音節は出て行く途中で意味から滑り落ちた。もはや開かないスロットを通り抜けるコインのように。少年はまばたきした。その瞬間は消え、彼はまた幸せになった。都市が幸せを作るように。以前なしに。
ナディアは動きを止めていた。彼女が話したとき、彼が予期していなかった何かが彼女の顔にあった。やはり言葉のない悲しみ。彼女がかつて立っていた部屋の形。形だけが。「言わないで」と彼女は言った。「あの子には必要ないの。あの子は決してそれを欲しがらない。それだけは都市が正しくやったのよ、アーサー。欲しないこと。あなたはこの建物のなかで、この都市の幸せを一度も学ばなかった、唯一の人なの」
それは、言葉が彼の頭蓋のなかへ届きはじめて以来、誰かが彼に向かって言ったいちばん真実の言葉だった。彼はそれに答えることができなかった。答えは箱のなかに住んでいた。そして箱は閉じたままだった。
彼は彼女に配給のパックを置いていった。彼女は受け取ろうとしなかった。手を組んだまま立ち、目で断っていた。数えられる贈り物を断るように。だから彼は、去り際にそれをホールの敷居の石の上に置いた。説明することのできないものとして。彼が振り返ると、彼女は言った。「下への道は駅を通るの。プラットホームを過ぎて、04時17分で止まった時計を過ぎて——この下で、グリッドのものでないただひとつの時間よ。網は毎正時にプラットホームを読む。あの時計の先は決して見ない。古い塗料の下の道は、網が数えない道よ」彼は死んだ階層のなかを押し進んだ。黒い毛皮の切れ端は、彼の心のなかで一緒に進んだ。次のスロープをずっと下りながら、箱の錠を押しつづけた。
スロープの最下部で、猫は、頭を前脚から持ち上げるのに足りるだけ、目を覚ました。まず耳が立ち、ほかの部分は横たわったままだった。猫は一度だけ彼を見た。嘲りはそこから消えていた。低く、ほとんど平板な声で言った。
うまくいくさ。あの子はお前の都市の賜物を持っている。持ったことのないものを、決して失いはしない。
猫はかつて、四千万がなぜ通行料のように記憶を引き渡したのか、彼に尋ねたことがあった。彼には一語があった。しかしその一語では、これは覆えなかった。次の一語を見つける前に、頭は前脚のうえに落ちた。眠りが再びそれを覆った。フラットの眠りより深く、昼の眠りより深く。
彼はひとりで駅の階層を押し進んだ。古いプラットホームの残骸を過ぎて。04時17分で止まった時計を過ぎて。凍りついたままの腕。都市のなかでグリッドのものでない、ただひとつの時間を過ぎて。猫はそのすべてを通して眠っていた。彼はその呼吸を数えた。03時09分に、継ぎ目を数えたのと同じように。リズムは変わらなかった。眠りはフラットの眠りより長く、午前の眠りより長く、彼が猫が費やすのを見た何よりも長く続いた。そしてそれが何であれ、その代価はまだ、支払いの期限を迎えていなかった。トンネルの壁が彼の前方に開けた。彼は立ち止まった。
彼は最初、それを影だと思った。あるいは湿りの染み。アンダーパスの古いレンガが、もとの色まで食べ戻されたもの。やがて彼の目は、すべてを測るときと同じように、それを線ごとに測った。線が組み上がった。組み上がったものは、猫だった。
壁に描かれた、弓なりに反った猫の姿。彼が自分の膝の曲線で知っている背中の弧。鉤のように上がった尾。あまりに古い顔料で描かれていて、それはすでにレンガの一部になっていた。黄土色と煤。猫がどんな姿をしていたかを覚えている手が、そこに載せていったもの。黄土色はレンガの気孔のなかに、壁自身の湿りのように、粒ごとに横たわっていた。どんな光も持ち上げることのできない深さで。尾の煤は、その長い闇のすべてを通して、輪郭をぼやけさせなかった。グリッドに描かれたものではない。どの目によっても投じられたものではない。その姿は、根元に積もった小さな埃の上、古い光のなかに立っていた。尾の鉤はモルタルの上に一本の細い影を投げていた。都市が建てられて以来、動いたことのない影。
彼はそれを長いあいだ見た。膝の上の猫は、間違って深く眠りつづけ、動かなかった。彼は眠らせておいた。目覚めに費やすものは何であれ、道に費やすことのできないものだから。そして道はまだ終わっていなかった。姿は保たれた。それは選別の前から、都市の前から、空の算術の前から、そこにあった。そして一度も統治されたことがなかった。都市全体が自分自身の意味から滑り落ちていくあいだも、姿は顔料のなかで自分の形を保っていた。
アーサーはアンダーパスの闇のなかの車椅子に座り、都市のなかで書き換えることのできないただひとつの像を見ていた。眼下の道のうえに立ちのぼる、塗られた尾の鉤。現在の地図が描くのをやめた地図のうえに残された、最後の名前のように。網が決して数えることのなかった、ただひとつの通路に残された印のように。そして彼は、箱を開けずに理解した。自分より先に、ここに手があった。そして覚えていた。これがナディアの言っていた古い塗料であり、その下の道が自分の道であり、あの絵本以来はじめて、猫の絵を見つけたのだ。そしてそれは滑り落ちなかった。